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 『ユキノ・ララ・フェスタの日記』 

1533年10月16日

(c) IMC Games Co., Ltd. Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.

1533年10月16日 カタリ滝 快晴

リンドン男爵の要請に従い、リボルドウェを出発し、コインブラへ向かう。
午後にはコインブラに着く予定だったけれど、開拓支援本部が用意した馬車馬はとんだ駄馬だった。
御者は上流で降った雨のせいでアルビ川の水位が云々言ってたけど、フェルッチオ・ジャンクションを過ぎたあたりでもう日が暮れてたから下手な言い訳に違いない。
とにもかくにも、今夜はここカタリ滝で夜を明かす。

今朝、集合はクイーンズ・ゲート前だった。
これからコインブラが拠点になるから門とも並木道ともしばらくお別れだ。
新大陸にやってきてからおよそ1ヶ月。
オルペシアを発ってから2ヶ月と少し。
住み慣れた館を後にして3ヶ月半。
あっという間だった気がするのに、まるでリボルドウェが故郷のように感じた。
あの館にも王都にも抱かなかった郷愁の念。
それを世界の果ての街で体験するなんて。
なぜだろう?

リボルドウェでお世話になった人たちには昨日までに挨拶を済ませていた。
にも関わらず、何人かが見送りに来てくれた。
もちろんカレンと私のためだけに来たわけじゃない。
今日は他の家門の6人と一緒だったから。
でも、それでも、正直嬉しかった。
商店街の人たちには破格の安さで装具一式譲ってもらったばっかりなのに。

ナジブさんは彼の神と私たちの神に祈ってくれた。
クラウドボネさんとイッジさんはお互いに競うように大声で送ってくれた。
パンファルロさんから渡されたお弁当はもらった時、まだ温かかった。
何歩も行かないうちに涙が出てきた。
泣いたのなんていつ以来だろう。
(あとで思い出したけど、助教の鬼曹長に修正された時以来だ)

「情けないぞ、胸を張れ」
そういうカレンも奥歯を噛みしめていた。
姉の気丈さが紙一重のものなのは知っている。
だけど、私の知る限り、彼女はあの日から涙を流したことはない。
涙を止めることなんてできないから、せめて胸を張って歩いた。
幸い、背中は涙を流さない。

焚火の灯りと夜の闇のちょうど中間にカレンが座っている。
いつからこちらを見ていたのだろうか?
私がこの日記を書いているのをじっと見ている。
「今より目が悪くなると的に当たらなくなるぞ」
それが彼女なりの優しさだ。

カレンは会話が途切れるとすぐに寝てしまった。
歩哨の傭兵は私より強そうだったから安心して眠れそうだ。
滝の轟音が心地よくなってきた。
しかし、寝る前にこれだけは書いておこう。
コインブラはどんなところかとカレンに聞くと「1ヵ月前にちょっとだけ立ち寄ったじゃないか」みたいな意地悪を言わずにこう呟いた。

「きっと……泣くほど別れが辛い人に会えるさ」


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 『ララ・フェスタ家の年代記』 

論功行賞

(c) IMC Games Co., Ltd. Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.

ディロスラテム討伐隊に参陣した30余りの開拓家門には、それぞれ武勲に応じた報酬が女王陛下より下賜された。
ララ・フェスタ家は5,000visを賜ったが、これは最も低い金額だった。
しかし、彼女たちにとってこれは大きな一歩となった。
新大陸拓殖株式会社の仕事を請け負うということは本国や女王陛下の目に留まる可能性もある。
この頃、カレン・ララ・フェスタは、第二第三の「開拓王」となって本国に招聘されることを狙っていたと思われる。

報酬の授与が終わると、ララ・フェスタ家を含むいくつかの開拓家門が別室に招かれた。
先の勲功に関係なく集められたようで、彼らは一様に首をひねった。
だが、理由は明快だった。
共和派や明らかな共和思想の持ち主が除かれていたのだ。
あとから入室したリンドン男爵は挨拶もそこそこに、彼らにコインブラへ向かうよう要請した。
路銀とコインブラ支部への推薦状を用意するという好条件だった。

カレン・ララ・フェスタは更なる好機と捉えていた。
一方、ユキノ・ララ・フェスタは新大陸拓殖株式会社の在り方に疑問を抱き始めていた。


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 『ユキノ・ララ・フェスタの日記』 

1533年10月10日

(c) IMC Games Co., Ltd. Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.

1533年10月10日 リボルドウェ 快晴

アル・ケルト・モレッツァの悪霊退治に参加。
まるで戦争のようだった。
士官学校の演習を思い出す。

反逆者ディロスラテム大司教とその私兵の亡霊が大聖堂の廃墟に出没するらしい。
レオナルド・エクスプレスの駅馬車が襲われたりと何かと不穏だった。
処刑から何年も経つのに憐れと言えば憐れ。迷惑と言えば迷惑。
先日もクラウドボネさんたち自警団がリボルドウェに迫る亡霊や怪物を退治したと話題になっていた。

先週、開拓支援本部はディロスラテム討伐の布告を出した。
カレンは貼り紙を見て「これぞ好機」と言いきった。
どこからそんな自信が出てくるのかわからない。
だけど、私は彼女の力になりたくてここにいる。
今こそ力を発揮したい。

昨夜はよく眠れなかった。
半刻も寝てない気がする。
いつも以上に早起きしたカレンに叩き起こされた。
まったく元気な人だ。

役所通りに集まった討伐隊は大規模なものだった。
数百人はいたのかな?
街の人たちの声援。
リンドン男爵の閲兵。
観閲式ってやつには出たことあるけど出陣式は初めてだ。
商店街の人たちが沿道から声かけてくれたのは嬉しかった。

午後には大聖堂跡に到着。
兵隊より先に血気盛んな開拓家門が突撃した。
私たちもそれに続こうとする。
だけど、私はカレンの姿を見失わないようにするのがやっとだった。
実力が足りない。
怪物たちに足止めされて建物の入口にもたどり着けない。
腕の立つ開拓家門は続々と扉の向こうに消えていくのに。
悔しい。
すごく悔しい。

私たちがもたもたしてる間に大聖堂前は大乱戦になった。
装填が間に合わなくてひやひやした。
「リボルドウェに栄光あれ!」って声が聞こえたから、「女王陛下万歳!」って応えた。
士官学校の頃の癖で当然のつもりだったけど、何人かの開拓民に睨まれた。
ここはもうベスパニョーラじゃない。オルペシアですらない。
グラナド・エスパダだ。

空が赤く染まり始めた頃。
弾薬は輜重卒から分けてもらわなきゃならないほど撃ち尽くし、銃身は溶けちゃうんじゃないかってほど加熱していた。
カレンの背中はもうとっくに見えなくなっていた。
きっと無事だろうから、ろくに力になれなかったことの方が気がかり。
大聖堂の入口付近で何か騒いでると思ったら勝ち鬨だった。
どこかの開拓家門がディロスラテムの亡霊を討ち取ったらしい。
大聖堂まで近いようでとても遠い。

万歳の嵐の中、私は呆けていたに違いない。
埃と返り血で汚れた笑顔で近寄る人物が最初は誰だかわからなかった。
カレンが体当たりのような勢いで抱きしめてきた。
どうやら姉はなにがしかの戦果を挙げたらしい。
父を失って13年余り。
こんなにも嬉しそうな姉を見たのは初めてかもしれない。
私はちゃんと笑顔を返せただろうか?

リボルドウェに凱旋したときはすでに日が暮れていた。
それでも街中の灯りが煌煌と輝き、喧噪が止むことはなかった。
街路や広場のいたるところでどんちゃん騒ぎ。
それを背に、カレンと離れ、私はひとり先に帰宅した。
疲れているはずなのになかなか眠れない。

今も窓の外から凱歌が聞こえる。


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 『ララ・フェスタ家の年代記』 

ディロスラテム討伐隊

(c) IMC Games Co., Ltd. Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.

1533年10月10日早朝、開拓支援本部の布告によりディロスラテム討伐隊が集結した。
アル・ケルト・モレッツァに出没する亡霊ディロスラテムは、当時のリボルドウェとその開拓民たちにとって大きな脅威となっていた。

討伐隊の陣容は、兵卒2個中隊、自警団1個分隊、開拓家門約30家、総勢400名余り。
ララ・フェスタの姉妹もそこに名を連ねた。
その数は皮肉にも、1528年の反乱に際し、生きたディロスラテム一党を討伐した軍勢よりも多い。

出陣式は開拓支援本部長リンドン男爵臨席のもと執り行われた。
討伐隊は午前中にリボルドウェを進発、採石場、フェルッチオ・ジャンクションを経て、アル・ケルト・モレッツァへ侵攻した。


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 『グラナド・エスパダ開拓期文書集』 

【布告】ディロスラテムの亡霊を討伐せよ!

(c) IMC Games Co., Ltd. Published by Hanbit Ubiquitous Entertainment Inc.

開拓民諸賢に告ぐ!

聖職にありながら女王陛下に弓引き処刑された、
逆賊ディロスラテムが亡霊となり蘇った!
反逆者は多くの悪霊と共にいまなおアル・ケルト・モレッツァに巣食っている!
我が社はこのような暴挙を看過することはできない!

我らはリボルドウェのみならず新大陸全土に平穏をもたらさねばならない!
よって、来る10月10日にディロスラテム討伐を実施する。
勇気ある開拓民は下記に従い、精鋭たる討伐隊に合流されたし。
我々は君たちの力を必要としている!

 -記-

 日 時 : 1533年10月10日 午前6時
 場 所 : リボルドウェ開拓支援本部前
 対 象 : 全開拓家門
 報 酬 : 武勲次第


新大陸拓殖株式会社開拓支援本部


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